遺骨は供養の対象物ではない!?

遺骨は供養の対象物ではない!?

 「遺骨は供養の対象物ではありません。粗大ゴミと同じです」と檀家さんにハッキリと言い放った寺の住職を知っていますが、言い方の問題はあるにせよ決して間違いでありません。

故人の遺骨(遺骸)を大切にするのは当たり前の事だと思っている方も多いと思いますが、実は世界的にみても遺骨を守る供養をする国はごく少数で、むしろ特異な弔い方をする人種だと思われている可能性さえあるのです。

いつ頃から遺骨を大切にするようになったのか?先ずは日本の弔い方の歴史を探る必要がありそうです。

火葬の歴史

日本では縄文時代には既に火葬が行われた形跡が確認されているようですが、それは権力者などお偉いさんの話で庶民の火葬が一般的に普及したのは鎌倉時代だと言われています。

荼毘(だび)にふすとは燃やす意味がある仏教用語であるように仏式は火葬、古来から日本に根付く神道は土葬、このように日本では火葬と土葬の文化が入り混じる歴史の経緯がありました。現在の圧倒的な火葬文化が定着したのは意外にも平成に入ってから、と言っても今から約20年前ぐらいだと思います。

世界一の火葬大国

今では当たり前となった日本の火葬文化ですが、他国と比較すると群を抜き世界一の火葬大国なのです。

日本の火葬率が限りなく100%に近い事は周知の事実ですが、世界的には火葬続く高い火葬率が96.76%の台湾、93.30%の香港〜カナダ、タイ、韓国、イギリスが約80%前後〜62%ドイツ、約半数の50%アメリカや中国、40%フランス、24%イタリア、10%ロシア〜イスラム圏は宗教の影響が色濃くアラブ首長国連邦は僅か1%の火葬率となります。

世界的にも極めて少数の地域に「洗骨」の風習があり、かつて沖縄の地方にも土葬された故人を数年後に掘り起こし洗浄して再埋葬するしきたりがあったそうですが、いずれも霊を鎮める目的の行為だったようで現代のような遺骨に愛着を抱く意識とは大きく異なると思われます。

例外を除き弔い方の歴史を辿ると日本人はいつごろから「遺骨」を大切にするようになったのか、そのキーポイントは一つに「戦争」もう一つは「火葬文化の定着」の影響が強いのではないかと考えられます。

15年戦争とも言われる先の大戦で戦地に眠る約125万体以上ある漂流遺骨の捜索も戦後76年経った現在でも続いています。そして戦後間もない昭和23年に制定された墓地埋葬法を転機に土葬から火葬文化に徐々に浸透し、土葬式の弔い方では直面しなかった故人の「遺骨」と身近になっていった事。

現代の埋葬の大半は区画墓地に家族単位で墓を建立し、故人の踵骨を墓の下に埋葬しているのが殆どですが、墓の下の地中に埋葬する行為は土葬の名残りと言っても過言ではありません。

しかし昨今の超高齢化社会の影響もあり、墓地の継承者がいなければ「墓じまい」せざるを得ず、新たに墓を新設するケースも激減しているのです。

このような時代背景もあり、墓の有無を問わず遺骨を供養の対象とする傾向が強くなったとも考えられます。

お釈迦さまの遺骨で争い事!?

仏教の開祖であるブッダの遺骨をめぐり八つの国が所有権を主張し最終的に小分けにして国に持ち帰ったと言い伝えがあります。

また、アメリカ同時多発テロの首謀者と言われる凶悪テロ組織の設立者の亡き骸も、この日本でも幾多の事件を引き起こし平成の世を震撼させたあの教祖の遺骨も宗教崇拝の対象、聖地化とされるリスクがあるため、慎重に扱われました。

世界的にも火葬文化は普及が進み、それと同時に焼骨を大切にする傾向は自然な事なのかも知れませんね、、、