早春を告げる日本の花「梅」

春の訪れを告げる花、2月の時候の挨拶で用いられる代表的な花でもある「梅」ですが常に好敵手でもある「桜」と何かと比較対象とされがちです。

日本最古の和歌集で知られる万葉集では桜が詠まれている和歌の数が43首、それに対し梅を詠んだ数は約110と圧倒的に梅の人気が証明されています。(和歌を詠んだり嗜む上流階級層であろう。)

ところが古今和歌集(平安時代)の中では梅の和歌18に対し桜は70余りと逆転している。

ご存知「東風吹かば匂い起こせよ梅の花  主として春な忘れそ」で知られ「学問の神様」「至誠の神様」として今も多くの人々に信仰を集める菅原道真公と言えば「梅」、神童と呼ばれた幼少期のわずか5才で詠んだ和歌が残されているようで、その中には既に「梅」を詠んだ和歌があるほど道真公と梅の結びつきは深いようです。

一説には藤原の陰謀から失脚、太宰府に左遷されその2年後遠く現在の北九州の地で亡くなり、後に企てたとされる一族関係者に非業の死が度重なり道真の怨霊「祟り」と恐れられ、古今和歌集に於いて「桜」が「梅」を逆転勝利した要因も平安貴族の策略がある?のかも知れません。

「醍醐の花見」でも有名な桜の名所でも知られ、秀吉が晩年一世一代の大花見を催したことがその後の花見文化になったとも言われています。

江戸時代以降の花見は上流階級のみならず公園や堤(一説には護岸を強化するために桜など根を張る木を植樹したようです。)などに植樹され庶民も楽しむ行事と広がり、桜が満開になる時期は大勢の人でにぎわい、飲んで食べて踊って春を満喫したのは今も昔も一緒のようです。

一概に梅と桜を比較することはできませんが「花見」と言えば断然梅より桜で、見た目の華やかさや派手さの他に全国的に梅を愛でる場所も時期も異なり春の花、花見=梅とはならない要因があり、対して桜は愛でる場所が公園、学校、河川など豊富で時期も「桜前線」などと呼ばれ規則正しく列島を北上してゆくため花見の準備もしやすく桜の開花に合わせてイベントや行事の日程を設定することが多いですよね。

余談ですが今年の花見は政界ではタブー?菅義偉官房長官も桜は見るのも聞くのもウンザリだとはなしているように「桜を見る会」の推薦者名簿の隠蔽・破棄問題が収束せず、内閣府幹部6人の処分だけでは花見どころではないし、国民も納得しませんよね?※桜には何の罪もありません。

桜で最も身近で有名なソメイヨシノは江戸の植木職人が品種改良して完成した桜のようですが、ソメイヨシノは自生せず交配がほぼ不可能で増やすには接木や挿し木の方法しかなく、同じ遺伝子を持つソメイヨシノが日本各地に広まったためクローン達が環境条件さえ整えば一斉に咲くのだそうです。

このような歴史が梅と桜にはあり、日本の春(花見)と言えば「桜」

そして日本の春を告げる花は断然「梅」なのです。

異常気象の影響からか今年は1月には既に沖縄で桜が開花した各地で雪が少ないなどと報じられてはいますが寒暖を繰り返し梅のたよりも届き、着実に春は近づいているのです。