墓じまい(無縁墓)と深刻な空き家問題

全国で増え続ける「空き家」。

総務省が公表した2023年の住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は約900万戸。空き家率は13.8%と過去最高となり、この30年間で約2倍に増えているそうです。

人口が減少しているのですから、空き家が増えること自体は不思議ではありません。

しかし問題は、「誰も住まなくなった家」が、なぜそのまま何年も残り続けるのかということです。

なぜ空き家はなくならないのか

理由は一つではありません。

親が亡くなり実家を相続したものの、自分は遠方に住んでいる。

売却しようにも買い手が見つからない。

解体するには費用がかかる。

兄弟など複数の相続人がいて、話がまとまらない。

そしてもう一つ、数字には表れにくい理由があります。

「生まれ育った家だから、なかなか壊す決心がつかない」

という気持ちです。

家は単なる建物ではありません。

家族と食卓を囲んだこと、子どもの成長、両親との思い出。

そうしたものが詰まった場所ですから、合理性だけで簡単に処分できないのも当然でしょう。

「そのうち考えよう」が問題を大きくする

ところが、人が住まなくなった家は少しずつ傷んでいきます。

庭木や雑草が伸び、害虫や小動物が入り、雨漏りが始まり、やがて外壁や屋根にも傷みが出ます。

近隣への影響が大きくなれば、もはや所有者だけの問題ではありません。

現在では、倒壊などの危険がある「特定空家」だけでなく、その一歩手前の「管理不全空家」についても行政から指導・勧告を受ける仕組みがあります。

勧告を受けた場合には、土地の固定資産税などの住宅用地特例が受けられなくなることもあります。

それでも行政が、所有者のいる家を簡単に処分できるわけではありません。

財産である以上、そこには所有者の権利があるからです。

つまり空き家問題とは、

「誰のものなのか」
「誰が決めるのか」
「誰が費用を負担するのか」

という問題でもあるのでしょう。

空き家にしない一番の対策

では、どうすればいいのでしょう。

すべての空き家をなくす魔法のような方法はありません。

ただ一つ言えるのは、

空き家になってから考えるより、空き家になる前に考えておく方が、はるかに選択肢が多い

ということです。

親が元気なうちに、

「この家を将来どうする?」

そんな話を家族でする。

売るのか、誰かが住むのか、貸すのか、あるいは解体するのか。

結論が出なくても構いません。

家族が一度話題にしておくだけでも、その後は大きく違ってくるのではないでしょうか。

墓じまいのお客様から聞く「家じまい」

実は、私が墓じまいのご相談を受けていると、「家じまい」の話をお聞きすることが少なくありません。

すでに実家の処分を済ませたという方。

墓じまいと家の整理を同じ時期に進めている方。

そして、

「今はまだ住んでいるけれど、将来は家もお墓も考えなければならない」

と話される方。

大きく分けると、この三つのケースが多いように感じています。

もちろん家じまいについては私の専門ではありませんので、詳しいことをお話しできる立場ではありません。

ただ、墓じまいという仕事を通してお客様のお話を聞いていると、

「家」と「お墓」は別々に存在しているようで、実は同じ家族の問題としてつながっているのではないか。

そんなことを感じるようになりました。

そして、お墓にも同じ問題があります

承継する人がいなくなったお墓。

遠方に住んでいて管理することが難しくなったお墓。

何年、何十年とお参りする人がいなくなったお墓。

いわゆる「無縁墓」です。

しかし、空き家とお墓には決定的に違うところがあります。

お墓の中には、ご遺骨が納められていることです。

建物だけの問題ではありません。

墓石を撤去すれば、それですべて終わるわけでもありません。

ご遺骨をどこへ移すのか。

誰がその判断をするのか。

改葬に必要な手続きをどうするのか。

承継者や縁故者を確認できない場合はどうするのか。

無縁になったお墓を改葬する場合にも、法律に基づいた手続きが必要です。

現在の制度では、縁故者などに対して申し出を求める官報公告を行い、さらに墓所にも立札を1年間掲示するなどの手続きを経たうえで、市町村長の改葬許可を受ける必要があります。

つまり墓地管理者や行政であっても、

「長い間、誰も来ていないから撤去しましょう」

と簡単に片付けられるものではないのです。

空き家より難しい「無縁墓」

空き家問題については、国や自治体でもさまざまな対策が進められています。

それでも全国に約900万戸もの空き家があります。

では、その問題にさらに「ご遺骨」が加わると考えたらどうでしょう。

少し乱暴な例えかもしれませんが、無縁墓という問題の難しさが分かりやすくなると思います。

家も、お墓も、

「誰かが何とかしてくれるだろう」

では、なかなか解決しません。

そして時間が経つほど、所有者や承継者、親族関係が分からなくなり、問題は複雑になっていきます。

「無縁になってから」ではなく、その前に

だからといって、墓じまいを急いでください、という話ではありません。

お墓を守っていけるのであれば、それも一つの大切な選択です。

ただ、

「自分の次は誰がお墓を見るのだろう」

「子どもは遠方に住んでいるけれど大丈夫だろうか」

「自分たちの代で何か考えた方がいいのだろうか」

そう感じることがあれば、一度家族で話してみる。

それだけでも十分な第一歩だと思います。

空き家も、お墓も、問題になってから初めて考えるのではなく、まだ選択できるうちに考えておく。

次の世代に「困った」を残さないこと。

これからの時代、それも一つの大切な終活なのかもしれません。 

最後に――私自身も当事者です。

ここまで長い文章を最後までお読みくださった方の中には、ご実家やお墓の将来について、すでに何かしら気にかかっている方もいらっしゃるかもしれません。

実は、こうして墓じまいや空き家について仕事としてお伝えしている私自身も、決して他人事ではありません。

私にも実家があり、そして将来を考えなければならないお墓があります。

「いつか考えなければ」と思いながら、普段の生活の中ではどうしても後回しになってしまう。これは私も同じです。

空き家もお墓も、誰か特別な人だけに起こる問題ではなく、家族の形や暮らす場所が変わっていく中で、私たちの多くがいつか向き合うことになる身近な問題なのだと思います。

だからこそ、まだ何も決める必要のないうちに、家族で少し話してみる。
実家やお墓の将来を、ほんの少し考えてみる。

この記事が、その小さなきっかけになれば幸いです。

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